文字のサイズ

小 中 大

記事全文

平成29年1月11日静岡新聞:記事全文

見出し 菊川の課題~迫る 市長選 市議選(上)=低迷する茶業―ブランド構築に期待
日付 2017.1.11
新聞名 静岡(朝)
22
連載・コーナー 中東遠
ジャンル 地域 西
記事全文 任期満了に伴う菊川市長選と市議選が15日に告示される。市長選は4期目を目指す現職と新人の一騎打ちの公算。市議選は定数17に対して24人前後が出馬準備を進める。選挙戦を前に、菊川が直面する課題を探った。◇ 「茶価は年々落ちているが、肥料や機械にかかる金額は変わらない。もうけは減る一方だ」。昨年12月、一番茶に向けて茶園の防寒対策に追われる山田孝司さん(55)=同市中内田=は、苦しい茶業の現状をこう語った。 20年以上茶業に携わる山田さん。「最盛期だった15年ほど前と比べると茶価は半値ぐらい。辞める人はかなり多い」と感じる。丁寧に整備された山田さんの茶園から少し視線を移すと、耕作放棄され伸び放題になった茶の木が目に入ってきた。市によると、2015年の市内の茶農家数は974軒。1995年の2154軒から20年で半数以上減った。市内の耕作放棄茶園は16万平方メートルほどとみられる。市は荒廃茶園の整備に補助金を設けるなど支援体制をつくっているが、引退者に歯止めがかからないのが現状だ。茶業全体が低迷する中で、茶業関係者からは「近隣にはより高い価格を維持している地域もある」との指摘が上がる。掛川茶として販売した方が1キロ当たり300円ほど高値がつくことから、掛川市の荒茶工場へ茶葉を持ち込む生産者も多いという。半済地区の茶販売業の男性(42)は「菊川茶は高品質という評価はされるが買い手につながっていない。ブランド力が不足しているのではないか。選挙が、改めて菊川茶というブランドをどうPRするか考えるきっかけになってくれれば」と新しい取り組みに期待する。市長選に立候補を表明している現職太田順一氏(66)は「もうかる茶業」を提唱。茶豆など茶に関連する新しい特産品や海外輸出戦略を練ることで生産者の所得を上げ、茶業全体の活性化につなげようとしている。新人の菊川市議小笠原宏昌氏(52)は「宣伝戦略を練り、積極的にトップセールスをかける。機械導入の補助金制度や茶農協の組織体制を見直し、経営支援にも力を入れる」と訴える。市議選でも、農業経験のある立候補予定者らが茶業振興を主張する。