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平成29年1月23日静岡新聞:記事全文

見出し 浜松原発 かすんだ論争 市民「物足りない」―菊川市長選 本社出口調査
日付 2017.1.23
新聞名 静岡(朝)
26
連載・コーナー
ジャンル 社会
記事全文 現職の太田順一氏(66)が新人の元菊川市議小笠原宏昌氏(52)を破り、4選を果たした22日投開票の菊川市長選。選挙戦では合併前の旧菊川町長時代から19年トップを務めた太田氏の実績をどう評価するかが争点となり、政策論争は低調に終始した。特に、市の大部分が半径20キロ圏内に入る中部電力浜岡原発の再稼働問題は両氏が積極的な言及を避けたためかすみ、市民から「物足りない」といった不満も漏れた。静岡新聞社が期日前投票の出口調査(16~21日、有効回答数871人)で「選挙戦で浜岡原発再稼働問題の政策論争は深まったと感じるか」と尋ねたところ、51・8%が「あまり」「まったく」と回答し、「十分」「ある程度」とした28・7%を大きく上回った。浜岡原発再稼働に関して両氏の主張は「反対」。明確な違いがなかったことに加え、両陣営の戦略が論戦の低調さに拍車を掛けた。「原発は争点でなく、(演説でも)特別に触れる方針はなかった」と太田氏の選対関係者。小笠原氏も「市民の関心が薄いとみて、他の政策説明に時間を費やした」と述べた。こうした姿勢に対して、「なかなかはっきりと言えない部分があったのだろう」(70代男性)とおもんぱかったり、「テーマがあまりにも大きいので自治体の首長の立場では論争にならない」(50代男性)と理解したりする声の一方、「争点にならなければ市民の関心が遠のく」(60代男性)との指摘も聞かれた。再稼働は必要だと考える70代女性は「本当はどちらにも投票したくなかった」と選択肢のなさを嘆いた。当選に沸く事務所には中電の幹部らも顔を見せたが、太田氏は報道陣の取材に「(再稼働への)市民の理解は得られていない。使用済み核燃料の最終処分の問題もあり、それらを事業者や国に訴えていく」と強調。出口調査でも6割が再稼働を「必要でない」としていて、民意をバックに原発問題へ厳しい態度で臨むとみられる。ただ、再稼働に反対であっても「国から再稼働を求められれば断れないのではないか」「新しいエネルギーが出てくるまでは原発を動かすこともやむを得ないと思う」などと話した市民は少なくない。別の70代の女性は「みんな口に出さないだけで原発についていろいろと考えている。市長には市民の思いをしっかり受け止めてほしい」と注文した。