文字のサイズ

小 中 大

記事全文

平成29年5月24日静岡新聞:記事全文

見出し 風紋=菊川「わんわんパトロール隊」―見守り意識持つ契機に
日付 2017.5.24
新聞名 静岡(朝)
20
連載・コーナー 中東遠
ジャンル 地域 西
記事全文 毎日愛犬の散歩に出掛ける飼い主たちに、地域の高齢者の見守りを担ってもらう新事業「わんわんパトロール隊」が菊川市で始まった。隊員は散歩中、認知症高齢者の徘徊(はいかい)などを見かけたら声を掛け、市地域包括支援センターに通報する。市によると、県内では初の取り組みで全国的にも珍しい。高齢社会に向けて、市民全体が見守りの意識を持つきっかけにしてほしい。 第1期隊員には13人18匹が登録した。全員が「認知症サポーター養成講座」を修了し、認知症の特徴や対処法を学んでいる。地域の事情にも詳しく、隊員が毎日目を光らせていてくれるのは心強い。これまで菊川市では各地区の社会福祉協議会が見守り事業を担ってきたが、若手の人材確保でそれぞれ苦戦している。そこで市担当者は「視点を変えるだけで誰でも簡単にやれる。新しい負担が必要ないことをコンセプトにパトロール隊を考えた」と話す。活動は日ごろからやっている散歩だけ。加入条件の養成講座も1回数時間の参加でよく、基礎知識を学ぶ簡単な内容のため気軽に参加できる。厚生労働省の推計によると、2025年には認知症高齢者が約700万人、65歳以上人口のおよそ5分の1に達する。独居高齢者や高齢者世帯が増える中、市民全員が認知症の理解を深め関心を持つことが必要だ。菊川市には、事業開始以降パトロール隊に参加したいという問い合わせがあり、「犬仲間に活動を伝えてみる」と話す隊員もいた。犬の飼い主でなくても、買い物など日常の中で困っている人がいないか少し注意を傾けることはできる。ある勉強会で、認知症のリハビリに関わる作業療法士の話を聞いた。「最大の予防法は家の外に出て、地域と関わること」。わんわんパトロール隊が示した「気軽な福祉参加」の意識を多くの人が共有し、高齢者が住み慣れた地域で生き生きと暮らせる社会を実現したい。