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令和1年7月3日静岡新聞:記事全文

見出し 風紋=東遠3市の手話言語条例―助け合い広がる契機に
日付 2019.7.3
新聞名 静岡(朝)
18
連載・コーナー 中東遠
ジャンル 地域 西
記事全文 掛川、菊川、御前崎の東遠3市が同時制定した手話言語条例が施行3年目に入った。6月には菊川市消防本部が職員向け手話研修会を開き、掛川市議会が本会議すべての手話通訳を始めるなど、地域での取り組みは広がりを見せている。非常時には人命を救う可能性もある手話への関心を一層高めていきたい。菊川市消防本部の研修は職員約50人が参加し、傷病者に症状を尋ねたり、災害時に避難誘導したりするための手話を学んだ。手話を主な意思疎通の手段とする「ろう者」は市内に20人ほど。同本部によると、救急現場でろう者に対応する際、主に筆談を用いるが、手のしびれで字が書けず症状を把握できないケースがあるという。市身体障害者福祉会ろうあ部の藤原基時部長(69)は、以前肋骨(ろっこつ)骨折の大けがで搬送された時、救急隊や医師に症状を伝えられず、手話通訳が来るまで痛みをこらえ続けたそうだ。一刻を争う処置が必要な場合に備え、「手話が分かる人が一人でもいると心強い」と話す。同ろうあ部は市に対し、災害時に同報無線で避難を呼び掛ける際に「近くに耳の不自由な人がいたら助けて」との文言を加えることも要望している。東日本大震災の被災地では津波襲来を伝えるサイレンや声が聞こえず、避難が遅れた聴覚障害者がいた。地元でも災害が予想される中、日頃から地域に溶け込みたいとの思いは切実さを増している。菊川市は条例制定を機に、健康福祉部の全職員が毎朝の朝礼で手話を学ぶ時間を設け、本年度はこども未来部にも広げた。市の手話奉仕員養成講座は受講希望者が増え、「よく来てくれるろうの利用者と、もっと会話したい」との理由で受講を始めた商店主や医院の職員もいるという。御前崎市も本年度、初心者向けの手話講習会の開催を計画している。藤原さんは「最近行き会う人に手話であいさつされることが増えてうれしい」と話す。手話が注目される中、普段から積極的に使ってみようと思う人が増えているのだろう。手話をきっかけに、地域の中で学び合い助け合う関係が一層広がっていくといい。