文字のサイズ

小 中 大

記事全文

令和2年4月4日静岡新聞:記事全文

見出し 月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践4校 成果と課題
日付 2020.4.4
新聞名 静岡(朝)
11
連載・コーナー 月刊一緒にNEO
ジャンル 特集
記事全文 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2019年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた県立静岡聴覚特別支援学校、川根本町立本川根中、富士宮市立西富士中、菊川市立菊川西中の4校の担当教諭が取り組みの成果や課題を説明した。プレゼン力の向上も 川根本町立本川根中 滝井玲緒教諭学年混合で新聞に触れる活動を展開した。全校生徒が20人の小規模校だからこそ、NIE活動でもそれぞれの生徒への丁寧な指導につながった。15分間の放課後学習で、新聞記事を紹介する取り組みを実施した。最初は苦戦した1年生も、上級生のプレゼンテーションを見て発表が上達した。コンビニ店の24時間営業問題の記事を題材にしたディベートではグループ内での話し合いが盛り上がりを見せ、生徒たちが自分の考えを固めていた。生徒と教員間でやりとりする「NIEノート」も作成。相手の価値観を理解する力が付いたほか、教員が生徒の考えを知ることにも役立った。複数の新聞を読み比べることで、一つのニュースへの異なる見方や微妙な言葉の違いを楽しむ姿勢が見られた。生徒には今後も、正しい情報収集や広い視野で考える力に身に付けてほしい。多彩な情報得る力に 県立静岡聴覚特別支援学校 勝又一歩教諭 山根渉教諭自然に周囲の音が入ってこない聴覚障害児は、視覚で得られる情報で不足分を補うことが大切だ。一度に多彩な情報に触れられる一覧性や、何度も読み返せる確認性といった長所がある新聞は、非常に効果的な学習素材と考えられる。気になるニュースを子どもが選んで発表する学習では、初めて知る言葉を手話で説明する勉強につながった。サッカーワールドカップ(W杯)の記事を集めて結果を予想したり、紙面に出てきた地名を地図帳で調べたりする授業も行った。一方、子どもたちが手話でニュースを紹介し合う際、相手がニュースの文脈や意味を取り違えるケースも多かった。新聞を繰り返して読み、情報を正しく理解する力を養っていくべきだと実感した。実践を通し、指導する教員側がどのような効果を期待して新聞を取り入れるのか、明確に意識する重要性を感じた。読解力の育成に効果 富士宮市立西富士中 大口拓真教諭 渡辺操教諭 「読解力の育成」をテーマに文章の主題をつかみ、コンパクトに要約する力を養うことを目指した。テストでの無回答率が減少し、社会の動きに関心を持つ生徒が増える効果が出た。朝学習の時間では、教員が選んだ記事を題材に見出しづくりや語句探し、感想などを記入した。要約を行う際には、生徒たちが取り組みやすいように使用するキーワードを指定した。国語や社会だけでなく、数学や理科でも新聞を取り入れた。消費税に関する記事から、グラフを読み取る関数の学習に発展させた。リチウムイオン電池の研究で吉野彰さんがノーベル化学賞を受けた記事を使い、イオンを学ぶ授業で生徒の興味を引き出した。一方、記事と学習内容を関連付ける難しさなど課題も残った。新聞をさらに活用するための実践の必要性を感じた。楽しめる活動を意識 菊川市立菊川西中 増田浩己教諭 丹所明日香教諭新聞を学習に取り入れる上で、生徒が興味を持ちやすいように“訓練のような雰囲気”を出さずにしたほか、教員も過度な負担なく楽しめる活動を意識した。教務主任をはじめとする7人の教員でNIE小委員会を組織し、このメンバーを核に展開した。廊下の掲示板に掲示する記事は、それぞれの個性や担当科目の話題があふれる内容になった。朝学習の時間には、記事を読んで質問に答えるワークシートを用意した。ニュースをテーマに自由な発想を求める取り組みも実践。若者を中心に人気が爆発したタピオカミルクティーに関する記事では、さらに売り上げを伸ばす方法を一人一人考えた。 語彙(ごい)の増加やコミュニケーション能力の向上、知識の獲得という、読解力の素地になる三つの力が付いたと感じられた。