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平成27年1月7日静岡新聞:記事全文

見出し 交通事故で両足まひも企業 奮闘、今年10周年 「障害者でも挑戦を」 会社経営の吉松さん(菊川)
日付 2015.1.7
新聞名 静岡(朝)
30
連載・コーナー
ジャンル 社会
記事全文 交通事故で脊髄を損傷し、車椅子生活を余儀なくされた菊川市堀之内の吉松豪次郎さん(45)が福祉用具貸与・販売「アイエル」の経営に奮闘している。障害者の自立した生活の手助けになればと願って設立した会社は徐々に軌道に乗り、10周年の節目を今年迎える。「足が不自由でもやろうと思えば仕事はできる。自分の姿を見てチャレンジする障害者が増えてくれたら」と期待する。吉松さんは大学卒業後、大手総合建設会社に就職。工事現場の監督業務に日々汗を流していた。25歳の時、オートバイで仕事場から会社の寮へ帰る途中、信号待ちの乗用車に追突した。入院して3カ月後、両足の完全まひで2度と歩くことはできないと告げられた。親を不安にさせないために悲しむ間もなくリハビリに取り組んだが、「一人でいると涙が出そうになることもあった」と振り返る。会社を退職後、設計事務所に勤務し、製図や積算といったデスクワークで生計を立てた。将来の展望は描けなかったが、仕事先で「税金を払える障害者になりなさい」と励ましの声を掛けられたことをきっかけに自身の障害を受け入れるようになった。2005年に一念発起してアイエルを設立した。年に100件ほど受注する手すりの取り付けや段差の解消工事は、上半身を頼りにほとんど一人でやり遂げた。時間は人の2倍かかっても、誠実に対応することで顧客の信頼を獲得していった。13年には磐田市に支店を設置し、現在は社員5人を抱えている。社会から養われているという障害者のイメージに「雇用の助成はあっても、起業の支援はない。商売を始める障害者を応援する仕組みがあってもいいはず」と訴える。