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平成29年2月21日静岡新聞:記事全文

見出し 浜松・遠州再発見~第4章 匠の誇り(6)=落合刃物工業(菊川市)―茶摘機 革新の一世紀
日付 2017.2.21
新聞名 静岡(朝)
19
連載・コーナー 浜松圏
ジャンル 地域 西
記事全文 1919年の創業以来、県内有数の茶産地・菊川市に本拠を構えて成長してきた茶摘機の国内トップメーカー「落合刃物工業」。59年に国内では初めてエンジンで動く茶摘機を発明、製作するなど、茶業界発展を支えてきた。「『より安く良い物を』の精神を先代社長たちから受け継いできた。生産者のニーズに応え続けていく」。3代目社長の落合益尚さん(60)の言葉は力強い。茶の品質を左右する刃の出来には特に強くこだわる。落合さんの祖父で初代社長の信平さんは元鍛冶職人という経歴の持ち主で、日本刀を鍛えることもできた。創業から100年間、試行錯誤を重ねてきた「焼き入れ」は切れ味を決める重要な工程で、その技術は門外不出。茶摘みの手法が手ばさみから動力式、乗用型と進化していく中でも変わらずに守られてきた。摘採作業が軽快にできるよう、軽量化にも挑戦している。新製品の開発には積極的で、「アイデアがあればすぐ試作することを社の方針にしている」。使用者の声を常に把握するように心掛ける。地元生産者が参加する「落合会」をつくり、営業担当だけでなく社長自らが話を聞いて回ることも多い。動力式摘採機が生まれたのも、生産者の要望がきっかけ。静岡の急傾斜地の茶園に適応した小型乗用から鹿児島などの広大な茶園向けの大型機まで、画期的な発明につながった。営業担当時代に世界各国の茶園を巡り、海外展開にも思い入れが強い。商標問題やコピー(模倣)商品に悩まされることも多いが、「まねできないような技術で作ればいい」と前向きだ。「菊川から世界へ茶業の発展を広める。地元メーカーとして、静岡茶の未来につなげる力になれたら」と思いを語る。