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令和1年8月27日静岡新聞:記事全文

見出し 清流=うつむくユリの花
日付 2019.8.27
新聞名 静岡(朝)
20
連載・コーナー 清流
ジャンル 地域 西
記事全文 車椅子に乗る男性が菊川運動公園付近で路上のユリを摘んでいた。夏になると群生するユリを頻繁に見掛けるが、路上のユリの花は下向きに開くため「売り物にはならない」と花屋は言った。3年前のユリが咲き始めた季節、相模原市の障害者施設で元職員が入所者らを襲った「やまゆり事件」が起きた。役に立たない、生きていても仕方がない―。事件の植松被告は障害者への差別的主張に今も固執している。私が送った手紙にも彼は「殺したのは人間ではない」と返してきた。下向きに咲いた路上のユリと植松被告が放った言葉がどこか重なった。人も、花も、役に立つことだけが存在意義では決してない。役立たず―。その響きは言葉の意味よりずっと残酷だ。