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令和2年8月23日静岡新聞:記事全文

見出し 本音インタビュー=菊川水害対策 治水協が始動 流域で主体的取り組み 
日付 2020.8.23
新聞名 静岡(朝)
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連載・コーナー
ジャンル 特集
記事全文 頻発する菊川の水害対策に地域を挙げて取り組む「菊川流域治水協議会」を7月、掛川市や菊川市、県と発足させた。国土交通省防災・減災対策本部の「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」で“流域治水”への転換が主要施策に挙げられ、各水系で協議会が設置される。菊川は全国2例目の設置で、県内で最も早い。-協議会の狙いは。 「気候変動で水害リスクが高まる中、河川や下水道による治水だけでなく国や県、市町、企業、住民といったあらゆる関係者によって流域全体で取り組む“流域治水”が強く打ち出された。全国の一級水系で関係者が早急に行うべき対策を盛り込んだ流域治水プロジェクトを本年度中に策定することになっている。策定後も実施状況のフォローアップを続けていく」-協議の内容は。「掛川市長、菊川市長、県袋井土木事務所長とともに菊川の特性に応じた対策を議論する。国交省による河道掘削や堤防整備といった河川対策は当然盛り込む。さらに流域対策として、例えば田んぼやため池の治水利用、下水道などの排水施設や雨水貯留施設の整備、災害ハザードエリアにできるだけ住まわせない土地利用規制や誘導といった方法が考えられる。住民によるマイタイムライン作成、工場や建築物の浸水対策、BCP作成などのソフト対策も重要。それぞれの立場でできる対策をみんなで決めていきたい」-菊川でいち早く始動した背景は。「菊川は流域面積が小さく水位が上昇しやすい。そのため支川から水が流れにくく内水氾濫が頻発してきた。7月下旬の雨でも短時間で氾濫危険水位に達して、菊川市内で床上浸水が発生した。対策が急務であり、流域全体での取り組みが効果的。掛川市と菊川市は水害への意識も市民協働の意識も高く、今回の試みの素地があり、全国のトップランナーにもなりうる」 -どう進めるか。「関係者が主体的に取り組める流域治水となるよう、丁寧な議論が重要。まず支川の黒沢川、与惣川をリーディング地区として、目標や対策を検討し、流域全体に展開していく。検討では施策と効果のシミュレーションもできるだけ示したい。当面は行政主体で議論を進めるが、住民や企業の意見を聞くなど、今後輪を広げることも考えている」よしだ・としあき 埼玉県出身。1997年建設省(現国土交通省)入省。下水道分野の研究や災害対策などに携わり、東日本大震災では発生直後から現地で情報収集に当たった。47歳。