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令和3年1月20日静岡新聞:記事全文

見出し 生徒募集停止の菊川南陵高 不登校克服の要 存続願う
日付 2021.1.20
新聞名 静岡(朝)
18
連載・コーナー 中東遠
ジャンル 地域 西
記事全文 菊川市の菊川南陵高が存続の危機に陥っている。生徒数減少で資金難になり今春の生徒募集の中止を決めた。運営体制の混乱が大きな原因だが、同校は不登校克服の手厚い支援で成果を上げる、県内でも類を見ない私立高だ。支援を必要とする生徒のためにも運営の再建と存続を願う。同校は2011年に現校名になり、意欲があれば誰でも応援するという方針で、勉強が苦手、不登校で内申点が足りない、といった生徒も受け入れながら独自の支援の仕組みを築いてきた。不登校経験者の大半が克服し進学、就職している。18年に開設した通信制通学型教室「りん」は、その集大成。生徒が適応性や学力を自分のペースで身につけていけるよう、生活から教員が寄り添い、少人数授業を施している。公立高を定年退職した元教員らが非常勤講師として集まり、現在は生徒29人を講師ら13人が指導している。ある男子生徒は小学校時代にいじめを受けて不登校となり、同校入学後も最初の1年は両親の車で登校しても校舎に入れない状態だった。教員が交換日記や対話を続け、少しずつ学校行事に参加するうち、仲間の輪に入るようになった。「自分も生徒に寄り添える教師になりたい」と夢を抱いて勉強に励み、公立大に合格。今は親元を離れ、前向きに努力しているという。担当した教員は「不登校の生徒は他者への不信や自己否定に苦しみつつ、踏み出す契機を探している。悩みを理解して寄り添い、機を逃さず後押しするのが重要で、今の手厚い体制は理想的」と胸を張る。それだけに「この場がなくなると、機をつかみつつある生徒たちがどうなるか不安だ」と切実に語った。同校はスポーツや進学・就職支援も売りとして、野球部が県大会準優勝した13年から数年は入学者が100人を超えていた。それが近年は運営法人内部の対立が表面化するなど混乱が続き、全日制の入学者が急減。現体制での運営が困難になり承継先を探しているが、難航しているという。同校に勤務する元公立高教員たちは「『りん』は本来、公が果たすべき役割を担っている」と口をそろえる。何とか地域も協力して存続させてほしい。生徒たちの未来が懸かっている。