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令和3年2月14日静岡新聞:記事全文

見出し いのち守る・防災しずおか=災害救助犬 捜索の力に 菊川のNPO法人 20頭所属 熊本地震、西日本豪雨で活躍 派遣先との連携、資金繰り課題
日付 2021.2.14
新聞名 静岡(朝)
27
連載・コーナー
ジャンル 特集
記事全文 菊川市のNPO法人「災害救助犬静岡」が熊本地震や西日本豪雨など被災各地で、捜索活動に貢献している。2016年には静岡県警と災害連携協定を締結した。要救助者の迅速な発見、保護に期待がかかる。一方、災害救助犬活動は民間ボランティアの善意に頼っているのが実情で、県外の捜索救助隊との連携態勢構築や資金支援など改善すべき課題は多い。「探せ!吠えろ!」。2月上旬、倒壊家屋やがれき現場が再現された菊川市の災害救助犬訓練場。犬を操るハンドラーになり約15年の永野葉子さん(53)=静岡市葵区=が愛犬でメスのシェパード「イーナ」に指示し、人のにおいを頼りに要救助者を探す訓練を行っていた。同NPOには訓練途上の犬を含めて約20頭が所属している。毎週、周辺地域からハンドラーと犬が集まり訓練に打ち込む。実際に成果が表れたのが2018年7月の西日本豪雨だ。永野さんとイーナは被害が大きい広島市安芸区で捜索に当たった。生存者の救助には至らなかったが、イーナが反応を示した場所から2週間後、1人が遺体で見つかった。当初、自衛隊員から「そこに人がいるはずがない」と言われたが、撤去作業を進める中で発見された。同NPOの救助犬は熊本地震や九州北部豪雨などでも数人の遺体を探し当てた。永野さんは「犬には卓越した力がある」と確信している。同NPOを設立した杉山和平顧問(69)によると、東日本大震災以降、行政や警察消防の間で災害救助犬の活用に向けた動きが全国的に活発化した。県警災害対策課の大石剛志次席は「どこから捜索活動すれば良いのか犬は探し当てられる。大きな戦力になる」と話す。一方、同NPOの場合、協定を結ぶ静岡県警以外の部隊と活動するには、被災地到着後に、傘下に入る隊を探す必要がある。スイスや米国では、救助隊が受け入れやすいように認定試験に合格した救助犬やハンドラーの情報を国が登録管理する仕組みがあるが、日本にはない。NPO法人災害救助犬ネットワーク(東京都)の担当者は「日本は災害救助犬の技能にばらつきがあり、派遣しても受け入れてもらえないケースがある。国や行政が中心となり、救助犬の広域連携体制を構築すべき」と提案する。また、日本の災害救助犬団体は協賛者を募っている。しかし、現状では資金不足の解消までは至らず、活動運営資金や現場への移動費などはハンドラーの自己負担だ。杉山顧問は「今後、社会が災害救助犬を広く活用していくならば飼い主の負担軽減も検討してほしい」と訴える。 提言・減災=治水に心血注いだ明善 安藤雅孝 名古屋大名誉教授金原明善の名を、耳にしたことのある読者は多いだろう。明善は、天保3年(1832年)に天竜川の西2キロの安間村(現浜松市東区)の名主の家に生まれた。14歳から19歳までの多感な時期に、結核を患い病に伏していた。当時、天竜川はひとたび大雨が降ると、濁流として平坦な遠州平野を流れ下り、各所で氾濫を起こした。江戸時代265年間に下流域の洪水は約120回数えた。明善は安間村の病床から、洪水が村を襲う様子を目撃したこともあった。安間村一帯は農村地帯であったが、小藩のため締め付けは緩く、農民も商売を活発に行えた。明善の父は商売上手で、黒船来航後、横浜に貿易店を開いたほどだった。病から回復した明善は、父にならい商売を始めるとともに、天竜川堤防の修復にも奔走した。47歳のとき、父から譲られた金原家の全財産を供出して、それを財源とする堤防工事が政府から認められた。その数年後には天竜川上流で、治水のための植林事業も始めた。明善は治水事業の他に、銀行、為替、運輸、出獄人支援などじつに多くの事業を手がけ、活躍の場は東京、北海道など各地におよんだ。大久保利通、渋沢栄一など多くの著名人との交流もあり、明善の事業の助けとなった。しかし、明善はぜいたくを好まず、倹約を旨として、汽車は硬い木の椅子の三等車に乗り、安宿に宿泊、粗末な服装をまとい、速足で山道を歩き、相手によって態度を変えなかった。こうして倹約した資金は植林に注いだ。92歳で亡くなる直前にも、籠に乗って植林作業を見回った。 がっしりとした身体に、鋭いまなざしの明善の写真からは、病気一つしない頑強な男を想像させる。しかし、実際には医者に頻繁にかかっていたと、明善から数えて5代目にあたる明善記念館長金原利幸氏に教えていただいた。少年期の病の影響だったかもしれない。子供の時に病床から見た洪水は生涯頭から離れず、明善を天竜川治水に駆り立てたのであろう。あんどう・まさたか 京都大防災研究所教授、名古屋大環境学研究科教授、台湾中央研究院教授を経て、2014年4月から20年3月まで静岡大防災総合センター客員教授。専門は地震学、固体地球物理学。77歳。わが町の自主防リーダー=声掛け育む共助の輪 工治男さん 浜松市中区住吉自治会災害時に自力での避難が困難な高齢者らを把握しようと、「命をつなぐ声かけ活動」と題し、3年前に戸別訪問を実施しました。浜松市から情報提供を受けた要支援者以外に、約100人の災害弱者が判明しました。共助の輪を広げる必要性を感じ、月2回、地元の小中学校周辺で朝のあいさつ運動に取り組んでいます。日常の声掛けから住民同士の顔の見える関係をつくり、防災の担い手としての意識を地域で育みたいです。ウオッチ3連動=想定震源域周辺のM3以上の地震活動(1月18日~2月7日)東海地震の想定震源域やその周辺では1月22日と2月6日、千葉県北西部でマグニチュード(M)4・1と4・3の地震が発生した。震源の深さはいずれも70キロ付近で、東伊豆町で震度1を観測した。1月23日には県西部の深さ15キロを震源とするM2・9~3・2の地震が2回起きた。掛川市や浜松市天竜区などで震度1~2の揺れがあった。期間中、県中部、東部、駿河湾、伊豆半島東方沖で目立った地震活動は観測されず、富士山の深部低周波地震は2回観測された。意見、感想をお寄せください 【メール】jishin@shizushin.com 【ファクス】054(284)9348 毎月第2、4日曜掲載 次回は28日