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令和3年3月26日静岡新聞:記事全文

見出し 不屈の灯 闘病”仲間”の希望に 乳がん治療中 藤原未央さん 菊川 県内ランナー 6月本番へ思い 聖火リレー出発
日付 2021.3.26
新聞名 静岡(朝)
33
連載・コーナー
ジャンル 社会
記事全文 自分と同じようにがんと闘う人に走る姿を見せ、「大丈夫、生きられる」と伝えたい-。新型コロナウイルスの影響で延期された東京五輪の聖火リレーが福島県をスタートした25日、本県の聖火ランナーとして“内定”している菊川市の藤原未央さん(41)は自分がトーチを持って走る姿を想像し、思いを新たにした。3児の母の藤原さんは4年前にステージ3の乳がんが見つかり、現在も治療中。「がん患者はただでさえ大変なのに、周りに気を使って病気を隠しがち。誰でもなる可能性があるのに、隠す必要はないのでは」。自身ががんであることを一切隠さず、療養している。聖火リレースタートを前に、大会組織委員会の森喜朗元会長の女性蔑視発言や、女性タレントの容姿を侮辱する開閉会式の演出案発覚など、五輪の理念から外れた問題が相次いだ。「なぜ男性中心の世の中が変わらないのか」。報道に触れるたび、憤りと共に疑問を感じてきた。美容学校に通っていたこともあり、ファッションが好きで個性的な服装をすることもしばしば。人と違うことで誤解され、物事をはっきり言う性格のため「女のくせに生意気」と思われたこともあった。乳がん発覚後は抗がん剤治療の副作用で髪がなくなり、お気に入りの洋服が着られないほど体がむくむなど容姿の変化を経験した。「人の見た目を侮辱するのはおかしい。価値観の違いを認められる世の中になるべき」と訴える。感染予防対策で沿道での観戦が自粛されるのは残念だが、「走ることでアピールできることがある」と決意は1年前と変わらない。がん患者が自分らしく生きられるよう、さらには個性を尊重する社会の実現を願い、聖火をつなぐ日を待ち望む。本県の聖火リレーは6月23~25日に、22市町26区間で行う。ルートは延期前とほぼ同じで、県実行委はまだ正式に公表していないが、辞退の意思や事情がない限り延期決定前と同じランナーを再び選定する方針。