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令和3年6月18日静岡新聞:記事全文

見出し 菊川夫婦殺傷 懲役21年 地裁浜松支部判決 「強固な殺意」
日付 2021.6.18
新聞名 静岡(朝)
27
連載・コーナー
ジャンル 社会
記事全文 菊川市で2020年2月にブラジル人夫婦を殺傷したとして、殺人と傷害の罪に問われた住所不定の元派遣社員山口正文被告(65)の裁判員裁判判決公判が17日、静岡地裁浜松支部で開かれた。大村泰平裁判長は「強固な殺意に基づく計画的な犯行」として、懲役21年(求刑懲役25年)を言い渡し、弁護側の無罪主張を退けた。大村裁判長は判決理由で、御前崎市の空き地で見つかったピエロ風のマスクに殺害された派遣社員デ・ソウザ・マルコスさんと被告の血液が付いていたほか、マルコスさんの妻と長男が目撃した犯人の風貌を踏まえ「被告が着用して犯行に及んだことが強く推認できる」と認めた。被告の乗用車内で見つかった夫婦の血痕も「被告が犯人でないとしたら合理的に説明できない事情」と結論付けた。第三者が被告の血液をマスクに付着させた可能性を指摘する弁護側の主張には「現実的な可能性があると言えず、それをうかがわせる事情もない」と見解を述べた。判決によると、山口被告は20年2月17日、菊川市赤土のマルコスさん=当時(44)=方敷地内で、マルコスさんの左胸などを刃物のようなもので複数回突き刺し失血死させた上、マルコスさんの妻=当時(43)=の腕を切りつけ全治約2カ月のけがを負わせた。マスク発見住民「最初ごみだと」 「犯人のでは?」一転証拠に菊川市で2020年に起きたブラジル人夫婦の殺傷事件で、有罪の決め手になったマスクは、事件現場から約5キロ離れた御前崎市の空き地で、地元の60代男性が偶然見つけた。男性は「ごみだと思い捨てるつもりだった」が、男性の妻の一言をきっかけに警察に提出。事件の解決に貢献した。拾ったのは事件発生から約2週間後の20年3月4日。幹線道路沿いの空き地に置かれていた。「骸骨みたいな模様で、変な物が落ちているな」。町内会で地域清掃に力を入れていた男性は、ごみとして持ち帰った。自宅で「ごみ袋に入れてしまおう」と考えていると、マスクを見た妻に「菊川の事件の犯人が動物の覆面を着けていたとニュースになっていた。ひょっとしてそれでは」と言われた。「まさか」と思いつつ、気になって翌日に近所の駐在所にマスクの画像を見せた。事件は急展開した。男性が菊川署に提出した5日後、山口正文被告が逮捕された。捜査関係者は「候補の1人だったが、マスクが見つかり確定した」と振り返る。被告の起訴後に県警から感謝状を受け取った男性は「忘れられない出来事。役に立てて良かった」と話した。