文字のサイズ

小 中 大

記事全文

平成28年12月9日静岡新聞:記事全文

日付 2016.12.9
新聞名 静岡(朝)
16
連載・コーナー
ジャンル 特集
記事全文 消費者の好みが多様化する中、県内の茶生産者は主力の普通煎茶、深蒸し煎茶以外にも目を向け、多彩な茶の生産に本腰を入れ始めた。特に国内外で需要拡大が期待される抹茶原料の碾茶(てんちゃ)は、煎茶に比べ単価が高く注目度が高い。静岡、沼津、富士など各地で生産拡大に向けた協議会が設立されるなど、動きが活発化している。抹茶を生産販売する流通サービス(菊川市、服部吉明社長)は高品質な碾茶を生産するために茶園に設置する金属製の棚に、太陽光発電装置を備えるビジネスモデルを推進している。棚の設置、碾茶に適した品種への改植などの初期投資を売電収入で回収する仕組み。服部社長は「太陽光パネルが過剰な光を遮って品質に好影響があり、凍霜害にも強くなる」と説明する。抹茶輸出の長期的な拡大見通しに懐疑的な県内生産者は多いが、服部社長は強い需要を肌で感じている。現在EUなどの10カ国に抹茶を輸出し、さらに中東など12カ国のバイヤーと商談中。「外国産と比べて高品質が評価され、数十トン単位の商談もあるのに、輸出対応の碾茶の供給が追いついていない」と悔しい経験をしてきた。生産者であることは販売にも有利に働く。茶園の視察を希望するバイヤーは多く、太陽光パネルのエコなイメージも、環境意識が高い海外の抹茶の需要層に強力なアピールポイントになっている。 「海外のバイヤーや消費者からは、畑や品種など生産に関する質問が多い。日本という産地の生産者から直接買いたい意向が強い」と服部社長。国内外の商談会や取引先でのプロモーションには石臼を持参し、その場で抹茶の製造をデモンストレーションしたり、和服で呈茶したり。すべての商談先に自ら出向き人間関係を形成し、抹茶を単なる商品としてではなく、文化として提案する。