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平成30年12月2日静岡新聞:記事全文

見出し 香り高い碾茶生産へ 乾燥温度、摘採時期・・・ 製造条件の違い調査―県茶業研究センター
日付 2018.12.2
新聞名 静岡(朝)
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連載・コーナー
ジャンル 特集
記事全文 県茶業研究センター(菊川市)は、抹茶の原料となる碾茶[てんちゃ]特有の香りが発生する仕組みの解明を進めている。製造条件の違いによる香り成分量の差を明らかにすることで、香りの高いより高品質な碾茶生産につながるとみている。碾茶は、日光を遮断する覆い下栽培で育成され、製茶の過程で「覆い香」や「かぶせ香」などと呼ばれる独特の香り成分「ジメチルスルフィド(DMS)」が生み出される。碾茶の乾燥工程初期の温度は150~180度と煎茶に比べて高いため、温度がDMSの生成を左右するとみられているが、どの段階で香りが発生しているのかはっきりしていなかった。センターは、伝統的なれんが造りの碾茶炉を使って香り生成のメカニズムを調査した。碾茶炉では3~4層のコンベヤーが乾燥室内を徐々に移動して数十分かけて乾燥させていく。検証の結果、熱源に近く高温で処理される最も下のコンベヤーの通過時にDMSの蓄積量はわずかだったが、終盤の荒茶に仕上げる過程で大幅に増加したことが分かった。研究を担当する勝野剛上席研究員は「最も高温な工程初期の段階で特徴的な香り成分が作られるかと予想していたが、実際には水分が減少する後半の過程にならないとDMSは増加しない」と分析。現在は摘採時期や収穫後の経過時間が碾茶の品質にもたらす影響についても調べている。勝野研究員は「生産性向上につながる製造方法を模索し、輸出拡大を続ける県産抹茶の生産量増に寄与したい」と話す。