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令和2年6月21日静岡新聞:記事全文

見出し 漫画家 小山ゆう 「颯汰の国」 4巻発刊 戦う人の生きざま 痛快に
日付 2020.6.21
新聞名 静岡(朝)
9
連載・コーナー 情熱細胞
ジャンル 特集
記事全文 菊川市出身の漫画家小山ゆう(72)の歴史コミック「颯汰の国」4巻が発刊された。徳川幕府にあらがい、理不尽な権力の行使に立ち向かう主人公佐々木颯汰を、アクションと人間ドラマを交えて痛快に描く。「いつの時代も理不尽な目に遭う人はいる。戦う人たちの生きざまを見てほしい」と話す。同作は漫画誌「ビッグコミック」(小学館)で連載中。小山が「師匠」と呼ぶ、さいとう・たかをの「ゴルゴ13」を掲載する同誌での作品は初めてで「プレッシャーがあり、ハードルが高かった」と明かす。物語の舞台は伊豆地方。寺の和尚に育てられた颯汰は愛情を受けて伸び伸びと成長し、剣の腕が立つ青年となるが、改易によって運命の歯車が回り出す。切腹を命じられた領主の娘琴姫を守り、自由の領地を勝ち取るべく徳川幕府に挑んでいく。4巻では、家康最後の落胤[らくいん]という颯汰の出自が仲間に明かされる。幕府にも颯汰の存在が知れ、ハラハラさせられる展開が続く。「『どうなってしまうんだろう』という緊迫感、そこが勝負。次が見たいと思わせないと」最も得意とする時代劇。原点は小学生時代に全盛だったチャンバラ映画という。「命がけの戦い」にしびれた少年時代の経験が、読者をドキドキさせる作品を描きたいと思わせる。デビューから47年。「ストーリーを考えるのは大変だけど、楽しいし本当に好き。天職を得て幸せ」。数々の名作を生み出してきたが「何かを訴えたいと思って描いたことはない」と言い切る。「漫画は娯楽。ただ楽しんでください。それだけですね」