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平成27年4月21日静岡新聞:記事全文

見出し 茶の魅力和の心欧州へ 「人生懸け」県内で研修 初取引も見学 スウェーデンのオスカルさん
日付 2015.4.21
新聞名 静岡(夕)
3
連載・コーナー
ジャンル 社会
記事全文 日本茶に魅せられて来日したスウェーデン人の若者が、県茶業研究センター(菊川市)で研修中だ。ブレケル・オスカルさん(29)は、高校時代に出合った日本茶の“神髄”を学びたい一心で日本語を習得。4月から無給で本県茶業のイロハを学んでいる。「和の心を知る専門家として、ヨーロッパで日本茶をプロデュースしたい」と夢を思い描く。地元の高校で明治維新後の日本の近代化の歴史を習った。身の回りにはテレビ、ゲーム機など日本製品があふれていた。「何か興味深い思想があるのでは」。茶道、日本食、和のデザインなどを独学するうち、「お茶がなければ日本文化は成り立たない」との結論に至った。スウェーデンの嗜好(しこう)飲料はコーヒーが一般的という。紅茶店で緑茶を購入したが、入れ方が分からず、とりあえず熱湯で入れた。苦かった。その後、中国の釜いり茶などと飲み比べ、日本の蒸し製緑茶がお気に入りになった。大学を休学し、兵庫県で農家を手伝いながら初めて日本で3カ月のホームステイ。農家や住民と触れ合ううち、「日本茶インストラクター」の制度を知った。「人生を日本茶に懸けよう」と決意した。22歳だった。帰国後は大学の日本語学科に入り直した。岐阜大に交換留学もした。2012年、初めての日本茶インストラクター認定試験は不合格。専門用語は難しく、製造など現場のことが分からなかった。日本で仕事を見つけ、休日は全国の茶産地や荒茶工場を訪れた。満を持して臨んだ14年のインストラクター試験でついに合格。「一度落ちたおかげで現場を知ることができた」と思えた。15年4月からは県茶業研究センターで製造や育種の指導を受け、英語で日本茶を発信するブログも開設。茶器や茶道も、理解を深めるつもりでいる。21日は静岡茶市場(静岡市葵区)の新茶初取引会場を訪れ、荒茶の商談を初めて目の当たりに。「交渉のスピードがこんなに速いとは」と、新たな発見に充実した表情だった。