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平成29年4月7日静岡新聞:記事全文

見出し 解説・主張しずおか=手話言語条例に協調 菊川、掛川、御前崎の3市―障害理解へ先進的施策
日付 2017.4.7
新聞名 静岡(朝)
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連載・コーナー
ジャンル 特集
記事全文 菊川、掛川、御前崎市の市議会2月定例会で手話言語条例の制定が決まり、3市で4月1日、同時施行された。菊川市によると、複数の市が足並みをそろえて同様の条例制定に取り組んだ事例は全国的に珍しいという。条例を理念だけで終わらせず、手話や聴覚障害への理解を深め、誰もが暮らしやすい社会を実現させてほしい。手話言語条例は、行政の責務として、市民の手話の理解を深める計画的な施策展開を規定した。市民、事業者にも、手話通訳者の育成やろうあ者が利用しやすい環境づくりなどの努力を求める内容となっている。3市の協調は、2016年6月に全国手話言語市区長会へ同時加盟したことや、東遠地域を拠点に活動する小笠ろうあ協会の呼び掛けなどがあり、実現した。複数市が歩調をそろえた同様の条例制定事例は見られないが、県内では単独市の取り組みとして15年12月に富士宮市議会が初めて可決し、浜松市議会でも16年3月に成立させた。それぞれ、幅広い世代へ手話を普及させようと条例を解説したパンフレットの配布や親子向けの教室開催などの取り組みを展開している。菊川市の森下路広福祉課長(51)は「条例はスタートライン。手話を身近な存在にするには、いくつもハードルを越えなければ」と話す。同市では今後、初心者でも参加しやすい手話講座を展開していく方針。イベントにも積極的に通訳者を招き、手話が使われている場面を多くの市民に見てもらうという。市身体障害者協会ろうあ部の藤原基時部長(67)は聴覚障害への理解が深まり社会参加につながることに期待する。「大声を出せば聞こえると勘違いをしている人も多い。ろうあ者とのコミュニケーションを面倒に思わないで」と訴える。手話をマスターすることは難しいが、会話のきっかけとなる簡単なあいさつや単語など基本的な手話を覚えておくだけで、そこから筆談や身ぶりによってコミュニケーションが図れるとも指摘する。16年4月に障害者差別解消法が施行されてから1年が経過し、共生社会実現に向けた機運が醸成されつつある。3市同時の条例制定という画期的な取り組みをきっかけに、東遠地域が「聴覚障害理解のまちづくり」で全国をリードする存在となってほしい。引き続き、3市で連携して先進的な取り組みを実施していくべきだ。