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平成29年5月25日静岡新聞:記事全文

見出し 野菜「バス停」で集荷、配送 物流効率化に一役 運賃負担軽減、鮮度もキープ―菊川の企業、県中西部
日付 2017.5.25
新聞名 静岡(夕)
1
連載・コーナー
ジャンル 地域 西
記事全文 菊川市の農業コンサルタント業「エムスクエア・ラボ」(加藤百合子社長)が中心となり、県内で農産物の新たな配送システムの構築を進めている。集出荷の拠点をバス停に見立て、「やさいバス」と名付けた冷蔵車が県中西部を巡回する仕組み。出荷する農家と受け手の飲食店などは最寄りの“バス停”で、農産物を積み降ろしすることができる。宅配業界の人手不足が問題となる中、物流の効率化やコスト低下に一役買う。“バス停”は現在、青果市場や直売所、飲食店など十数カ所。2台の冷蔵車が日曜日を除く毎日、静岡市清水区―菊川市、菊川市―浜松市西区の2ルートを時刻表に合わせてそれぞれ巡回する。昼ごろには“ターミナル”の同社で、2台のバスの農産物を入れ替えるため、県西部で出荷した農産物の鮮度を保ったまま、その日のうちに県中部の飲食店などで提供することができる。現在は約100軒の農家と実需者が利用している。 同社によると、中小規模の農家が遠方に少量の農産物を出荷する際、宅配便を多用し、費用は農家が支払うこともある。さらに宅配業界は人手不足に伴う人件費上昇を受け、大手各社が運賃の値上げ方針を打ち出すなど、農家の負担はさらに増すとみられている。 共同配送の「やさいバス」では農家の負担軽減のため、料金を宅配便の半額以下に設定。バス停に出向く手間はあるが、農家は費用を抑えられ、飲食店も新鮮な野菜を使用できるメリットがある。同社など全国の食品関連会社や物流業者で組織する協議会は1月5日~3月15日、県事業として、県内でやさいバスの実証実験を実施し、その後は同社が設立した子会社が運営を担っている。今後は県東部への配送エリア拡大を目指すという。加藤社長は「やさいバスを通じて、農家と飲食店との交流が生まれ、新たな取引に発展する」など相乗効果も挙げ、「やさいバスを通じて、人と人とのつながりを促進できる仕組みをつくりたい」と話す。