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平成29年8月25日静岡新聞:記事全文

見出し こち女 ときめきファクトリー=とじやすさと豊富なカラーで定番に―穴開け不要のファイル リヒトラブ静岡事業部工場
日付 2017.8.25
新聞名 静岡(夕)
4
連載・コーナー こち女
ジャンル 特集
記事全文 女性が気になるモノの開発、生産現場を訪ねる「ときめきファクトリー」。今回は、大阪市に本社を構える中堅文具メーカー「リヒトラブ」の静岡事業部工場(菊川市)。定番のパンチレスファイル、皆さんの身の回りにもあるのでは-。 ■厚さに応じて 金具工夫 文具店で何げなく手に取った、あるいは会社の買い置きのファイル。何の変哲もないが、書類をとじるのに余計な力がいらず、ずれない。しばらく使ううち、次も同じものが欲しいと思う-。同社が追求するのはそんな地味な使いやすさだ。穴を開けずに書類をとじる定番のパンチレスファイルは、1986年の発売。目新しさが求められ、商品の入れ替わりが激しい文具の世界で、30年以上のロングセラーはまれ。広報担当の陣内宏美さん(44)は「発売から今に至るまで主力商品。お客さんが付いてくれている」と誇る。使いやすさの鍵はとじ具にある。120枚用、160枚用と厚さによってバネの太さや滑り止め樹脂の素材を変え、書類を保持する力を最適化。2005年には、さらに書類が抜け落ちにくいよう、とじ具の方式を変更した新型も発売し、定番化している。もう一つの売りは、豊富なカラー展開。他社商品は5色が標準的だが、同社では従来型で12色あり、月別の使い分けも可能。オフィス需要の多い青系は水色から青、藍、紺と4色ある。廉価な競合商品もあふれる中、田中文浩常務(49)は「今までもこれからも、目指すのは使う人に喜んでもらえるものづくり。それには価格と品質、他社製品にない魅力-の3点のバランスが欠かせない」と意識する。ファイル以外にも商品は幅広く、最近は動物キャラクターのシリコーン製ペンケースが人気。中国生産だが、静岡の工場に併設の物流センター経由で流通する。上野動物園のパンダ誕生を受け、パンダが品薄状態とか。工場内は、コンピューター制御の自動式倉庫に収まる2000もの荷台が絶え間なく動き、無人の運搬車が行き交う。表紙にラベルを貼り、金具やポケットを取り付け、箱詰めして流通倉庫に運ぶまで、ラインはすべて自動化。金具の選別方法を見直すなど就労環境に配慮した騒音低減の工夫も凝らされ、思いのほか静かだ。◇……………………◇■創業の歴史 1938年、日本最古の文具問屋福井商店(現ライオン事務器)の営業担当だった田中経人[のりひと]が独立し、大阪で創業。後に製造へ転換した。黒い表紙につづりひもが主流だったファイルに早くから独自の金具を採用。62年には日本初の多色カラーファイルを発売し、人気を博す。社名のリヒトはドイツ語の「光」にちなむ。 ◇……………………◇■リヒトラブ静岡事業部工場 1990年完成。現在は国内で唯一の生産拠点として、パンチレスファイルだけで年間160万冊を生産する。約6万平方メートルに物流センターも併設され、従業員は約120人。8月の地蔵盆に合わせ、地域住民を招いて開く「地蔵まつり」は20年以上続く恒例行事として愛される。