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平成31年2月11日静岡新聞:記事全文

見出し 安心社会へ 検証・19年度予算案(中)=防災・減災対策―豪雨備え 河川掘削急ぐ
日付 2019.2.11
新聞名 静岡(朝)
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記事全文 川底から掘削した土砂を運ぶパワーショベルが忙しく動き、土砂を積んだトラックと空のトラックが工事現場を頻繁に出入りした。2月上旬、菊川市西部を流れる上小笠川。工事を請け負う建設業者の主任技術者若杉剛史さん(47)は「渇水期の方が工事がスムーズに進む。台風シーズン前に豪雨対策を進めたい」と力を込めた。県によると、同川流域では1998年9月の大雨で住宅の床上、床下浸水被害が発生した。約4年前にも同じ場所を掘削したが、継続的にしゅんせつしていないとすぐに土砂や草木が河道にたまり、大雨の際に氾濫の原因になりかねない。地元住民の要望も強く、県は2018年度9月補正予算で同川のしゅんせつを事業化。実施しているところだ。国は昨年の西日本豪雨を踏まえ、3年間で「防災・減災・国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策」に取り組む。県はこの緊急対策を活用して可能な限り防災・減災対策を前進させる方針で、19年度当初予算案に近年では最大規模の136億円余りを関連するインフラ整備費として盛り込んだ。事業費の半分は国負担、残りは県債で賄うが、この県債は通常事業よりも高率の交付税措置を受けられる利点がある。河川のしゅんせつ、土砂災害防止施設や農業用ため池の整備などを加速する。既に昨年秋に道路や港湾など計7千カ所以上を緊急点検し、河川は519カ所で実施した。上小笠川も点検したが、緊急対策の予算をどこに配分するかは未定だ。同川沿いでレタスを生産する同市中内田の農業松本英隆さん(74)は「この川(の流域)は浸水しやすい。継続的に掘削してほしい」と求める。工事を監督する県袋井土木事務所掛川支所の斉藤秀孝副班長は「異常気象に100%対応はできない。少しでも川の断面を広げて減災するしかない」と指摘する。異常気象が常態化し、南海トラフ巨大地震などの発生の可能性も高まる中で、防災・減災対策は喫緊の課題だ。県は緊急対策のほかにも、19年度当初予算案で津波対策や建築物の耐震化促進などに重点配分し、水害・土砂災害時の住民避難行動計画の作成支援など新たなソフト事業も盛り込んだ。限られた予算の効果をどう最大化するか工夫が問われる。