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令和2年8月5日静岡新聞:記事全文

見出し 風紋=菊川市のオンライン学習動画配信 通信環境の整備が急務―新型コロナ
日付 2020.8.5
新聞名 静岡(朝)
18
連載・コーナー 中東遠
ジャンル 地域 西
記事全文 新型コロナウイルス感染症に伴う学校の臨時休校期間に、菊川市では市内全3中学校が連携して授業の学習動画を制作し、インターネット上で配信した。生徒の学習機会を確保したことで、学校再開後に授業の進度に遅れが出なかったなど効果が現れているようだ。4月末から学校再開までに制作した動画は、実技教科を含む全9科目で計128本。独自に3校合同の「オンライン授業推進委員会」を立ち上げ、傘下に教科ごとの部会をつくった。教科部会は学校ごとに担当学年を決めるなど分担し、単元の要点を1本あたり約10分の動画にまとめた。生徒は各校のホームページから動画投稿サイトにアクセスして閲覧し、自宅で学習を進めた。50分の授業を10分の動画に凝縮するのは容易ではない。教員は内容を精選し、生徒の興味を持続させる動画作りを心掛けた。1本の制作に2時間ほど要するため、3校での動画の共有は教員の負担軽減につながった。学校再開後は、動画の復習や続きから授業に入った。生徒からは「動画を何度も見返すことで理解が深まった」との反応があったという。再開後のテストでは、苦手な教科で点数が高かった生徒もいた。オンラインでの取り組みは学習だけでなく、教員と生徒の心もつないだようだ。新学期で教員に数回しか会っていないにもかかわらず、動画を視聴していたため学校再開後にすぐに打ち解けられたという。取り組みの中心となった菊川西中の稲垣諒教諭(31)は「生徒に安心感を与えられたのでは」とみる。同校が7月に行った生徒アンケートでは「信頼できる先生がいる」という項目が昨年度より3ポイント上昇した。オンライン学習の課題は、家庭によって差がある通信環境だ。菊川市は自宅に環境が整っていない生徒に、動画を収録したタブレット端末を貸し出した。新型コロナの感染が再び広がる中、オンライン学習の確立や整備は急がれる。GIGAスクール構想により一人一台タブレットが導入されるのを前に、実験を重ねる必要がある。