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令和2年11月25日静岡新聞:記事全文

見出し 試行錯誤の力 他教科にも 学びの姿勢 手応え プログラミング教育 必修化 菊川・横地小の実践
日付 2020.11.25
新聞名 静岡(朝)
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連載・コーナー 教育総論
ジャンル 特集
記事全文 小学校の新学習指導要領に基づき、2020年度から必修化されたプログラミング教育の授業が県内の各学校で本格化している。県教委のプログラミング教育実践発表校の一つである菊川市立横地小では、全学年を対象に、教科の枠を超えた実施に挑戦した。タブレット端末などのICT機器を使いながら、試行錯誤を通じた論理的思考力やコミュニケーション能力の養成に力を入れている。「よし、これでどうだ!」「ここで5センチ進めないとだめだよ」「えーっ、なんでこうなるの?」。12日に行われた4年生の総合的な学習の時間。ペアに分かれた子どもたちは小型の掃除用ロボットの動作をタブレット端末に入力し、障害物に当たったら方向転換をするなど、思い描いたルートで動くよう調整を重ねた。授業は環境学習を導入に、住宅や学校を想定した地図上でロボットを動かし、下級生に紹介するのが目標だ。内田結菜さん(10)は「(プログラミングは)楽しいけれど、細かい調節が必要なところが難しい」と授業を振り返った。当初は教員が専用アプリの使い方を子どもたちに紹介したが、次第にペアや班を超えて子どもたちが教え合い、操作を覚えていったという。担任の高山俊康教諭(52)は、「試行錯誤をする力が付き、学びの姿勢が変わってきた。普段の授業でも『どこが間違っているのかな?』という議論が生まれている」と手応えを語る。同校では低学年の生活科や音楽の授業にもプログラミングを取り入れた。子どもの発達段階に応じた複数の教材をそろえ、臨時休校明けの6月ごろから教員間での教材研究を始めたという。情報教育担当の山内優教諭(30)は、「各教員が手元の教材をどう授業で生かせるか考えた。ユーチューブの動画で使い方を研究した人もいる」と明かす。2年ほど前から教育用ICT機器を扱うエルモ社(名古屋市)と共同研究を行い、各教室に常設したプロジェクターなどの機器を、教員も児童も日常的に使う態勢があったことも基盤になった。18、19年度には市のICT活用研究校として教員研修に力を入れ、山内教諭は「若手からベテランまで『まずはやってみよう』という機運がある」と語る。藤原明校長は、取り組みが進んだ背景として「ICT活用に取り組んできた人材がいたことや、小規模校の動きやすさという事情もある」と指摘する。プログラミング教育には端末や教材のソフト、通信環境などの整備が欠かせないため「子どもたちの将来に必要な教育。教育行政にはハード面で下支えをしてほしい」と求めた。技能習得より思考力を重視プログラミング教育は小学校の新学習指導要領で、子どもの学習の基盤となる資質・能力の一つである「情報活用能力」の中に位置付けられた。プログラミングの技能習得ではなく、コンピューターを使い意図する動作を実現させる過程の中で、論理的思考力を育むことに重点が置かれている。独立した教科ではなく、プログラミング教育そのものの成績評価は行わない。文部科学省はプログラミング教育の学習活動について、算数や理科の単元に組み込むほか、他教科やクラブ活動での実施、学校外での体験活動など、教育活動のさまざまな場面での導入を勧めている。県教委義務教育課の担当者は、新型コロナウイルス感染症対策で国のGIGA(ギガ)スクール構想が前倒しされたことに触れ「端末の整備が進めば各教室で取り組みやすくなるため、プログラミング教育の活用例が増えていくだろう」と指摘した。