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令和3年7月17日静岡新聞:記事全文

見出し 東京五輪 メダルに挑む期待の県勢=ソフトボール女子 山崎早紀 流れ引き寄せる主軸に
日付 2021.7.17
新聞名 静岡(朝)
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連載・コーナー
ジャンル スポーツ
記事全文 今季の日本女子ソフトボールリーグ前半戦、山崎早紀(トヨタ自動車、常葉菊川高出)はもがいていた。日本代表の中軸を期待されながら5節を終えて打率1割台で本塁打は1本のみ。「構えやタイミングでちょっとしたずれがあった」。昨季リーグで首位打者と打点王を獲得し、MVPに輝いた右の強打者がうそのようなスランプに陥っていた。それでも代表合宿で一心不乱にバットを振った。コロナ禍で海外チームとの実戦ができない中、男子チームの投手を米国の豪腕に見立てて打ち込んだ。「前半戦は力みが強くて打撃に影響が出た。逆に力を抜きながら本番に臨みたい」。練習なので打てなくても自分の感触が良ければいい-。スラッガーには確かな自信がみなぎっていた。◇東京五輪の1年延期が決まった昨年3月。直前に控えていた日本代表の発表も持ち越しとなった。“代表当確”とされていた山崎の心は揺れた。緊急事態宣言発令で練習ができない中、1カ月半ほど社業に専念した。バットやボールを握らず、あえてソフトボールを遠ざけた。グラウンド以外の職場で交わす同僚との会話が新鮮だった。「会社生活をする中で居心地がいいと感じてしまった。もうソフトボールはいいかなって」流されてしまいそうな自分を踏みとどまらせたのは、幼い頃の体験を思い出したから。掛川北中時代、部員が少なく、合同チームでの大会出場を余儀なくされた。その後廃部も経験した。「長くできたのは周囲のおかげ。子どもたちにもずっとソフトを続けてもらいたい」。29歳は再び日の丸を背負いバットを握ると心を決めた。◇常葉菊川高、トヨタ自動車で2学年先輩の遊撃手、渥美万奈とともに代表の屋台骨を支える。渥美は「高校から一緒なので山崎の自信なさげな雰囲気は分かる」とさりげなく声を掛けてくれるありがたい存在だ。山崎は「もう10年近くプレーしている。言葉を交わさなくてもプレーで分かる」と2人で守備でも打撃でも高め合いたいと話す。2018年世界選手権で2本塁打を放ち、同年のジャカルタ・アジア大会では6割近い打率を残した。国際大会にはめっぽう強い。「ここぞの場面でチームに流れを持ってくる一打を打ちたい」。主軸を担う自覚は十分だ。やまざき・さき 1991年11月12日生まれ。掛川市出身。小学2年でソフトボールを始め、掛川北中から常葉菊川高に進み、全国選抜大会と全国総体に出場した。2010年にトヨタ自動車入り。日本代表には16年に初招集。16、18年世界選手権に出場。29歳。